カルロ・スカルパ建築観賞(体験外記)

ブリオン家墓地 1969-1978 (72)
   
ブリオン家墓地の 立つ座る 空間変移

                     ブルーノ・タウト 旧日向別邸上段の間へ



                    設計:カルロ・スカルパ 1906-1978 (72)
                    Carlo Scarpa

 何人かの友人に6棟のスカルパ建築の写真をいただいた。これを見ているだけで、その形の密度で面白さが分かってきたもの。また形の密度は分かるが意図が中々分からないもの。特にブリオン墓地が新築でこれだけ密度高くいろいろやっているのに、その意図が分からなかった。ところがある建築家の解説を読んで、納得するものがありました。これは体験しないと中々わからないものでした。立った視界と座った視界に着目した体験することで明かされる建築でした。

これを見ているだけで、その面白さが分かってきたもの。


1956-1964 カステルヴェッキオ美術館改修 中庭 堀 カングランデ1世騎馬像


1957-1958 オリヴェッティ社ショウルーム




1973 ヴェローナ銀行増改築 バンカポポラーレ

良く解らいなーというもの。
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1956-1957カノーヴァ彫塑館

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「空間変移のデザインに関する研究」
1969-1978 クェリーニ・スタンパーリア財団改修

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1969-1978 ブリオン家墓地

スカルパ関連の著作本を漁ってみたが、やっぱり伝記物はつまらなく、作品への大雑把な修飾語しかなく、漠然として掴みどころがない。写真集もどうしたことか、不鮮明な印刷、ぼけた色彩などで到底見る買う気が起らないものだった。今回友人からのデジタルDATAを得ることができて、俄然観賞にのめりこむことができた。本の写真と、デジタルDATAの違いには本当に驚きでしたね。当たり前か、当たり前じゃないか?


 そんな中、スカルパ関連でネットを漁っていると、
木内俊彦氏の「空間変移のデザインに関する研究」に出会った。これは飛びぬけて新たな建築観賞の手引きになると思った。作る立場からも本当に有効な空間論が登場したと感じた。今までの漠然とした塊としての空間ではなく、面と開口との面構成が空間の秘密なのだと。写真と解説図(構成面と開口が図示された境界図)を見ながらスカルパ作品を解説しているのでした。ここまで具体的詳細に実物場面を、写真で示しての作品解説と言うのは無かったのではないでしょうか。スカルパだけではなく、建築作品理解の「実」がやっと動いた、というくらい大きな意味のある手引き書を作ってくれたと思っています。
この最初に出会った解説から、現在はもっと緻密に長くなったものをネットで見ることができます。できますれば入門用として、ものすごくシンプルなものも掲載していてもらえると、一旦簡単に入門できるために概略案内も重要と思いました。
その一端でも皆さんにお知らせしたく、以下に一部紹介してしまうことにしました。詳しくは是非本編に当たってください。

1956 - 1957カノーヴァ彫塑館
ホールから展示室への開口が、いろんなエッジとして捕らえられたホール空間とその複合開口から見える展示室の部分。歩みを進めると、エッジは消え展示空間の包囲空間に変移した。

(庭のRC壁の図)
1969 - 1978クエリーニ・スタンパリア美術館
こんな仕掛けをして、異界感のような演出をしているのですね。楽しいかもしれない。これは現場での立体視でないと理解するのが大変でしたが、解説がいいですね。


 また、たまたまある建築家のゼミでの講義録を手に入れることができました。
ここには西洋の「窓」と日本の「間戸(まど)」との二重性が、スカルパの多くの作品の基本手法としてあることを解説しています。それが西欧と日本の開口に対する風土的・材料構造的・生活慣習としての違いから生まれたのだと。
 
西洋は組積造の壁と言う閉鎖完結空間に穴を穿つボイド=窓=それは闇に一点の光という空間。
日本は屋根に覆われた開放空間の柱間に、戸を立てる=間戸=軒によって眩しい天空をカットした上で、柱間の開口からの豊富な光を軟らかく制御するフィルター間戸(まど)=蔀戸・舞良戸・障子・他。
またそれら建具の性格は屏風からの変成であると指摘されている。西洋・日本のそれぞれが立っている基盤の違いが生み出す光空間の差異が的確で分かり易く捕らえられていると思う。
(対比して分かり易いところを取り上げました。また竪穴住居からの民家の系統は壁に囲まれた閉鎖空間で開放空間とは別系統としてある。)


スカルパはこの二重性をそのまま作品化しているのでした。その解説がまた秀逸です。ボイドに対してはエッジに注目し、間戸ではフィルター性を展開していると。これもまた今までの空間論にはない解りやすさと深さをもっており、私でも今まで得られなかった西洋と日本の「窓」と「間戸」との違いが明快に書きだされ、解ったという感覚を持てた。
それは例えば古い石造のアーチ窓に(西洋既存)鉄製の引き戸(日本新設)を組み合わせたり、既存大開口に新設大ガラスの開口を組み合わせたりという事です。
(カステルベッキオ開口部)

 またブリオン墓地のテーマについて、特にパビリオンに表れた視線の高さにこだわったスカルパのスケッチを取り上げていた。この建築作品のテーマが、視線の高さの制御にあることを教えている。
(スカルパのパビリオンのスケッチ) ※20

そのことがスカルパが多くの日本建築の体験から、庭を室内から見る和風の仕様の、軒の深い意味を、この西欧の場での再解釈し作品化した、ということをやっているのが分かったのでした。スカルパの日本趣味の深さが分かるところでもあります。

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1969 - 1978ブリオン家墓地
   
ブリオン家墓地の立つ座る空間変移

ブリオン家墓地の建築テーマは視線の位置による視界の変化というところが主要なテーマらしい。
ブリオン墓地では1969 - 1978クエリーニ・スタンパリア美術館と同じようにRC打ち放し面に四角いタイルを持って視線の高さを明示している。ここブリオン家墓地では特にパビリオン(東屋)部ではっきりわかる面白さがある。ここでのテーマは立っているときの視界と、座った時の視界の広がりの違い、空間感覚の変化の面白さを創り出しているようだ。そしてその愛ではは日本建築からきているようなのでした。では墓地全体から徐々にそこに近づいてゆくこととする。

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1.ブリオン家墓地の敷地全体に視線の高さまでのコンクリートの塀が作られ、敷地外の世俗の畑や人家などが見えず芝の広がる場が守られている。そして内部にあって塀の上部には、大空と近所の教会の鐘楼が見えるだけになっており、静かな場を作っている。
※20
この2枚の打ち放しコンクリート縦段々壁に挟まれた門の暗がりの中に、二重円が見える。


2..共同墓地の入り口からアプローチすると、二重円開口コンクリート壁によって、場の突き当り感と二重円開口の向こうに緑地への視野の解放を演出する。
この二重円は大きな開口としては入ってよい感じを作りながら、周りの壁や床部に立ち上がりがあることによって違うらしいという感覚と、ここを超えると水面があるからやはりここから入るわけではなく、この庭を見せるステレオ窓であることがわかる。こう言うその場に立つことで解る身体感覚を喚起している。大きな芝の面に左にブリオン夫妻の墓標・右にパビリオンが見える。そして左側ではコンクリートの壁囲いが「すっと抜ける開口」になっていることで身体が誘導される。

 解放感から左手ブリオン夫妻の墓に導かれる。



 その向こうに 家族の墓

 家族の墓内部
3.まずは家族の墓だが、この家型の打ち放しコンクリートの屋根が見える。斜めのコンクリート塀の通路を進んでくると、この屋根の中に入ってくる。立っていると屋根によって閉じ込められた感覚を受け、足元の明るい墓石を意識することになる。ここで墓石に近寄って上がり、花を手向けるなど座ると、こんどは水平方向の視界が開けることになって、屋根の覆いはあるが、先ほどよりは水平方向の解放感が受けられるようになっている。この二つの空間変化を受け取ることができ、親密さに囲まれていた屋根と、墓石に向かって膝まづくと、今度は空が見えてきて開放感がくることになっている。
 パビリオン(東屋)


4.パビリオンへは二重円通路から管理されたガラスドアを開けてもらって入ってゆく。左手が蓮池になっている。
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 視線の高さにタイルが貼ってある。
そこでパビリオンに入ってみる。
木の板で作られた矩形の覆いの中に入ってゆくことになる。するとここも丁度視線の高さまで上部が真っ暗に覆われることになって、暗がりの中にハス池や緑地やブリオン夫妻の墓だけが見えるようになっている。
そしてすこし慣れてくると暗がりの中に、一部縦長の矩形の小さな開口があって、ここには遠くに見える教会を嵌め込んで眺められるようになっていると解る。また縦の矩形の開口とともに、メガネのような双眼の穴が開けられていて、これには教会下のブリオン夫妻の墓を望み見るのだろうか。
 立っている時の視界(加工写真)

 座った時の視界 瞑想の東屋からアルコソリウムを観る

次にここにはベンチ様の石段が設けられていて、これに腰掛けると今までは箱型の暗がりとその下に見えるプリオン墓地がすべてであったが、座った途端視界が明るくなって天空が開ける。そこには墓地と教会と山々と天空が広がって、開放感に浸ることができるようになっている、という事だと思う。この座ると視界が開けてくるという事は何を意味しているのだろうか。

そうここでは立っている時と座った時の視界の違いを制御することが設計のテーマになっている。立っていると視線上部に暗がりが支配し、座ると天空の明るさに開放されるという、視界の制御である。
この視界の制御には日本庭園を眺める時の作法が盛り込まれているのではないか?と思えてきた。
日本庭園は室内から眺める庭という設定が基本になっている。

まず廊下を歩いてゆくとき、軒天井が大きく視界上部を覆っている。これは大きな軒天井が天空の眩しさを制御して安定した庭への視界を確保するのでした。立っている時には大きな軒天井の暗がりが視界の大半を占めていますが、下方には立った視点の庭が見えています。そこで座ると天空の解放感が表れてきて、視界の広がりを感じるでしょう。そして床に座ったことにより安定した身体が得られ、床面から畳>縁側>庭へと流れるような視線が伸びてゆく身体感覚が得られます。これは床座ならではの安定した庭への視界の広がり感が用意されるのでした。

スカルパはこの軒天井の暗がりと、座った時の天空の解放感をこの西欧の墓地空間に再現したのでした。それがこのブリオン墓地のパビリオンという事になります。
そしてこの座ったといっても床に座ったのではなく、ベンチ上のものに座った天空の広がり感と、床面である池や芝生の広がり感はいかようなものなのでしょう。想像するだけで体験してないのでしたこの詳細は・・・・。
スカルパ自身は日本にきて幾つかの寺院や庵で床座での庭園観賞をしていることと思います。イタリアでは床座は無理ですよということだったのでしょうか。


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 チャペル外観
5.ブリオン家墓地、ここにはあらゆる手法が詰まっているのです。けれどこのコンクリートの塊からは私の取り上げるものが何も浮かんでこなかったの困っていたのですが、兎に角主要な写真を並べて終わりにしようと思っていました。
そして浮かんできたのはコンクリートの構造なのに、水平連続窓ではなく、組積造構造の縦長窓になっているなーと言うことでした。どうしてこうなっているのか?そこである建築家が言っていたことを思い出しました。RC造は組積造と考えないと、開口隅のクラック対策はいくらやっても無駄になると言っていたのでした。すなわち開口はアーチ形縦長窓になるのがRC造であっても素直なんだということでしょう。

世界建築行脚’87 ブリオン・ヴェガ墓地No.2 - カルロ・スカルパ
方や祭壇の後ろの回転開口は、このコナー壁の足元を可成りエグッテしまってバランスが悪いくらい挑戦的です。

 内部の壁? 世界建築行脚’87 ブリオン・ヴェガ墓地No.2

裏側から入ってくると大きく開けられた円形の開口があり、RCの壁なのに左右も天井面も床さえも構造から切り離され自立している。チャペル室の内側面では面ぞろえになっていながら、内壁面としては切り離されていて、これは壁ではなく衝立か屏風かはたまた鳥居か?の、結界を表しているのだ、きっと。スカルパの日本趣味の内面化された造形と言えるんでしょう。

 祭壇

 天井面トップライト※20
このトップライトは開閉するとのこと。
これは段々を繰り返し繰り返し角錐形に彫りこまれた暁に穿たれているのだから、究極の天空へのボイドということになる。西洋の究極のボイド仕様の窓と言うことです。ということが分かってきたと言えるのではないかなーと思い始めています。
スカルパは汲めども汲めども尽きないですね。


ところでこの段々は何処からきているのか?と言うことですが、いろんな説がありますが、ヨーロッパの教会の入り口には必ずこの段々がついてから、入口扉が付くこととなっています。内部へと導く段々これから来たと言うしかないようにおもいます。
 サンタナ スターシア教会 ベローナの旧市街にあるゴシック様式


(軽井沢の山荘を再発見して以来、居間の床面からバルコニーへと視線の浮遊をテーマに、和風の庭へ視線の在り方を探ってきました。そこに立たないバルコニー、室内から見る樹木たち、この流れる床からの視界は椅子座では得られず、本当は床座ならではのものなのだと思っています。その時の軒とは、開口の額縁効果とは天空の眩しさを遮り、樹木を浮遊する視線に安定した視界の提供という事だと確認してきました。床座か椅子座かの違いは何を意味しているのか?と理解を進めているところなのでした。)

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   関連 hp
カルロ・スカルパ考 古谷誠章NOBUAKI FURUYA 2005 東西アスファルト事業協同組合講演会

「空間変移のデザインに関する研究」 木内俊彦氏

※20 建築の詩人 カルロ・スカルパ 1997/7/1 斎藤 裕 (著)  TOTO出版 (1997/7/1)


カノーヴァ彫塑館 けんちく激写資料室 photo by sano.yu

カステルヴェッキオ美術館改修 けんちく激写資料室  photo by Hiroshi NISHIKIORI, sano.yu, M Takeuchi

オリヴェッティ社ショウルーム けんちく激写資料室 photo by N

クエリーニ・スタンパリア美術館 けんちく激写資料室 photo by N

ブリオン家墓地 けんちく激写資料室 photo by sano.yu, N 

ヴェローナ銀行増改築バンカポポラーレ けんちく激写資料室 photo by sano.yu, Hiroshi NISHIKIORI, M Takeuchi


-----------追記-------------------------------------------------------------------------
これを書き終えてから感じるのは、やっぱりこのパビリオンに実現された視界の変容は和風のものではなく、スカルパによって発見された和風仕様という気がするのです。何故ならば和風の軒は視線位置より高く、立つ座るの中での変化は小さいもので、スカルパのパビリオンのような劇的変化は起こりません。だからスカルパの創造創作に生み出されたものだった。
実は和風の立つ座るの変化とは、床に座ることによって、座っている面の「重畳」という事が起る。座っている床面>縁側床面>庭面と面の「重畳」が意識されるのです。それによって自分の座っている床面が外部へと浮遊してゆく感覚が起ることだと思っています。これが和風の床座の庭との関係なのです。
これが椅子座では起こらない、椅子のある床面のマトマリある場が成立しているゆえに、この外部への床の浮遊という事は起こらないのです。外部へは人が出て行くのです。洋風の床は大地と一体です。大地は動かない。大地は浮遊しない。外部へは人が出て行くのです。これが伝統的な洋風の庭との関係なのですから。スカルパはこの重畳が起らないので、パビリオンのすぐ外を池としました。池面ならゆらゆらと揺れて意識が漂うことができるからです。スカルパのパビリオンが分からせてくれたことはこれらのことなのでした。


-----------追記2------------------------------------------------------------------------
最近ブルーノ・タウトの旧日向別邸(1933)を見学してきました。
渡辺仁が地上部分2階建て木造別邸を建てており、その庭をRC造躯体で土留めとし作っていました。その地下RC造躯体の部分にインテリアデザインを設計したのがタウトでした。
タウトは吉田鉄郎からの和風の教えを受けていたという事です。
タウトの桂離宮論には「泣きたくなるほど美しい」とお庭を描写しています。そして古書院の様式を踏襲した上段の間を持つ和室をここに作っています。
また同じく上段の間を持つ洋間も作っており、この上段の間と洋間は5段の室幅いっぱいの幅広の階段で一体に繋がれています。この空間は熱海の海を眺めるために作られました。ここでは和風仕様の室内から庭を見る設定が生かされ、おまけにこの階段を利用した「もっと奥から」かつ段階を利用した視線の連続的な高さの変化を楽しむ装置として作られていました。大きくは洋間での視線と上段の間での視線の高さが変化(900)することで、水平線が見えていたものが、視線が高くなるとともに、水平線が視界の上部に消えて、海の波間の輝きが窓いっぱいに広がるという事だと思いました。(現場の視界は樹木の成長で葉が茂り海が隠されてしまっており、また上段の間に立つことができないので、想像です。)
この室内の奥(上段の間)からの海への一体感を作るために、洋間の黒光りする床が天空光によって光り輝いており、この輝きが海の輝きと一体となって感じられるのでした。この洋間の床が外の光で床が鏡のように反射するのは、日本の社寺仏閣はもちろん、一般家庭でさえ縁側やちゃぶ台が光るのが見られるのでした。タウトはこのことをよく知っていたと思われます。
このことを建築的により物語化するために、幾つかの手法を試みました。上段の間の天井は1/10海側に傾斜して、その竿縁天井が、軒天井のように感じさせながら、洋間の天井が外部天空であるかのように白色漆喰塗とし。上段の間以外の3方向の天井周りには600幅内外の竿縁天井を洋間に向けて、白色天井を囲んだ軒天井のように見せているのでした。この白天井が床に外光に反射して光る床面と、海面の反射面とのコラボレーションとして、室内と海とが連続しているかのようなメタファーが起っているのようなのです。

このような複雑な解釈は別としても、この視線の高さによる視界の変化の面白さは、スカルパのブリオン家墓地パビリオンに引き継がれたように思われます。立った時には天空が遮られ墓地内部しか見えない(上段では水平線は窓上に符合し、輝く海面だけが窓いっぱいに見え)。座ると空が視界に入ってきて解放感を味わえる。(下段では空が見えてきて海面と両方が見える。)スカルパが旧日向別邸を見ていないはずはないと思うのでした。

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旧日向別邸平面図 母屋(地上部分)・地下離れ
 旧日向別邸地下離れ 洋間・上段の間天井伏図

旧日向別邸 断面図 左側が海 
右側高くなっているところが上段の間からの視線と、そこから下がった段の途中からの視線

スカルパ ブリオン家墓地
パビリオンに立つ人の視線と、座る人の視線

 
旧日向別邸 上段の間、椅子からの想定窓視界を作ってみました。(地上母屋の窓からの海の視界を切り取り)
右がブリオン家墓地パビリオンで立っている時の想定視界です。二人の建築家の同じデザイン意図を感じますね。

 
旧日向別邸 下段からの想定窓視界(この時は順光線なので海は光っていません)
右がブリオン家墓地パビリオンでベンチに座っている時の視界です。


-----------追記3------------------------------------------------------------------------
岡山の後楽園内にある「流店」

その内部

 栗林公園掬月亭

これを書いていると、同僚のUからメールがあって、スカルパのパビリオンとそっくりの建物があって、岡山の後楽園内にある「流店」と言う、流れる水を建物内に流している東屋風施設の写真を送ってきた。これを見て確かに内観写真は雰囲気が良く似ている。そこでよくよく考えてみると、規模の小さい東屋風で、欄間でなく下がり壁だと、スカルパのパビリオンのように見えると言うことだと思う。また実際東屋で欄間でなく下がり壁の例は結構あると思いますし、スカルパのパビリオンが規模が小さいので、よく似ることになりますね。
ことの本質は和風の内法高さにあるようです。室内から庭を眺める和風の作法ですと、鴨居の内法高さ1735程度に着く天井からの下がり壁によって、立つ座るの視線の位置で、スカルパの見つけた視界の変化が楽しめることになりますね。これは和風の建物ならすべて適用可能で、岡山後楽園の流店に限らないことになります。と言う事でよりことの本質を掴んだ気がしています。
スカルパも どの建物ということではなく、和風の庭を見る作法をの中で、事の面白さを見つけたんだと思いますね。
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