体験外記 サグラダ・ファミリア 身廊内部 2000年主身廊天井ブォールト完成
         
               アントニ・ガウディ  1852-1926(74)

                   photo by kajimoto  2008.09

となりの友人がヨーロッパからアメリカまで旅行していることが解り、デジカメDATA貰えるか聞くとOKとのこと。早速見せて貰う。サグラダ・ファミリア身廊内部が飛び向けて良いではないですか。そこには、はっきりと、まとまった広がりとして、抽象空間が捕らえられていた。これはみんなに見て貰わねば。hpに載せる了解を貰う。体験外記第3弾は、ガウディ建築の近代空間への到達の告知でした。まずはこの圧倒的な饒舌さに充ちた教会空間を、それでもまごう事なき近代の抽象空間を堪能してください。



樹状柱の林立













身廊天井面は盃を逆さまにした形 (単双曲線回転面)



樹状柱の結束部に楕円と特異な切欠き

氷柱の結晶のようだ!


サグラダ・ファミリアの内部空間がここまでの広がりを見せている(出来てきている)これに感嘆。これはまごうことなき抽象空間ではないですか。この事の意味は、ガウディが建築史の中で孤立した、特殊な造形をやっている建築家ではなく、近代の建築史の流れに乗っていることが明確に示されていると言うことでした。ここまでまとまった空間が示されてやっと感じることができたのでした。

今回身廊内部の圧倒的な写真を見せられて、饒舌な抽象空間の展開に驚嘆したのでした。これはきっとガウディ独自のゴシック空間の展開からくる饒舌なのでしょう。けれどその氷の柱の結晶のような抽象形態に強烈に引きつけられるのでした。その近代への意志はこんなに凄かったのだと。

ガウディが亡くなったのは1926年。それはコルビュジェで言えば(いま調べています)1925年のパリ万国博覧会(いわゆるアールデコ博)では装飾のない『レスプリ・ヌーヴォー館』を設計しており、近代建築は一部始まっていたところでした。。こういう時代の展開の中にガウディもいたことの証明でもある、サグラダ・ファミリアの身廊内部空間だったのです。


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サグラダ・ファミリア 平面図 断面図

※03
サグラダ・ファミリア 断面図(左)    ブルージュ大聖堂(ゴシック様式) 断面図(右) (図のスケールを大きく間違えまして、訂正しました.。110827)
両者を比べるとサグラダ・ファミリアがかなり大きいことがかる。右は内部空間に対して、建物の外に余計な架構(フライングバットレス)が大きくはみ出しているのが解る(右)。
(左)身廊内部のシアン色のラインはカテナリー曲線 その内側のホワイトのラインは放物線。
身廊内部の樹状柱の形とカテナリー曲線がぴったり合うわけではないが、放物線や楕円よりは近い。
ガウディは全て石で設計し石で作ってきた。だが、身廊樹状柱は石を型枠にした鉄筋コンクリート造となってしまった。

※01
ガウディの逆さ吊り実験で作られたカテナリー曲線と、その他の曲線の比較。重りの掛け方でそれぞれの曲率となる。

ゴシックのアーチは曲面ゆえに外側に開く水平方向の力がかかる。このため控え壁や飛び梁が必要。
この水平力を0とする形態が、カテナリー曲線ということです。石造に最も適した架構をガウディが探し当てた。


※02
『もし紐が部材の重心を通っているならば、その部材は安定するであろう。もし通っていなければ、紐が重心を通過するようになるまで、その部材は揺れ動くであろう。』 (Martinell,1969) ※02

※02
樹状柱 スペインにはこんな形状の木がある!


ここからガウディの逆さ吊り砂袋のカテナリー曲線の意味が、ゴシックの構造から逃れて、徹底して水平力の生じない=ゴシック寺院のようなバットレスや飛梁を必要としない、石造建築のより自然な力の流れの構造形式を求めての、回答なのだと理解がどんどん届いたのでした。

2003年に東京都現代美術館で、ガウディ展が開かれていた。そのテーマは、サグラダ・ファミリアの身廊内部の柱から天井までの形態を中心に、幾何学形態の複雑な展開で作られていることの、3D動画による解説集となっていたのでした。ここでガウディが、抽象形態を作っていたことに感激し、単なる孤高の特殊解の作家でない、世界に開かれていることの評価が始まったのでした。

ガウディ展の時にも感じていたのですが、サグラダ・ファミリア内部が抽象幾何学形態であることを、それまで誰も注意換気してこなかったと言うことです。この事が解っていれば、ガウディを無視してよい建築家とは思わなかったでしょう。いやそれ以上に、この「けんちく探訪」の抽象空間の追求が、意味在る抽象に展開してきている現在と言うことの先に、抽象幾何学形態の複合化と言うことが控えているのではないかという、先読みができるのではないか、と言うことなのです。
近代建築の抽象形態は、初期の単純幾何学形態=キュービックによる開口の開け方の展開から、壁面構成(絵画になりたかった建築)、意味在る抽象形態(ゆがんだ真珠や並木)、曲面の展開にあり、その次にはもっと複雑な物に展開して行くことが予想される。ここにサグラダ・ファミリアの身廊樹状幾何学形態が繋がっているのかもしれない、と言うことを今回は感じているのでした。

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google地図より


1.スライド   11カットPDF

2.関連サイト
     ガウディ(ウィキペディア)
     サグラダ・ファミリア(ウィキペディア)

     YouTube - SAGRADA FAMILIA(途中内部在り)
     YouTube - Interior Sagrada Familia(内部)


     AFP通信 http://www.afpbb.com/article/life-culture/religion/2774042/6423479


11月8日この作業中、サグラダ・ファミリアでローマ法王を迎え神の場となる儀式が行われたと伝えられた。AFPの大きな画像DATAが配信され、感嘆した。当たり前のことだが、改めてキリスト教の儀式の場に相応しい荘厳さと、饒舌さが求められていたのだと辟易したのだった。上記の写真が特にガウディらしいおどろおどろしさがちゃんと見えているではないか。幾らか天空からの光が差し込む林の中に迷い込んだという感嘆が相応しい。実物もこんなに暗いのか?方や下の写真はこんなに明るいのか。ハイライトを少し落として、柱のトーンが見えるようにした。。気付くとその柱に液晶モニターが柱の数だけ着いている。
祭壇廻りの柱は濃い色の石を、上方の枝分かれするところで白く換えている。


AFPの画像は暗すぎると思うのですが。材質感等よく見えるように、少し明るくしてみました。
光あふれる空間になりました。
(液晶モニターの角度による明るさが違ってしまうこともそうですが、ソフトによる違いVIX,PHcs2,PSer,EXP,PDF,が大きくて困ります。建築室内の明るさは状況で変わるでしょうが、現場に立った時、よく覚えておくようにしています。画像の明るさ調整の判断はなかなか難しいです。)

3.参考図書
    ※01 「ガウディニスモ」 ---ガウディのことば・形・世界---
        松倉保夫著 1984/3/30発行 定価15,000円 発行所 (財)九州大学出版会

    ※02 「ガウディ かたちの探求」 監修・執筆:鳥居徳敏 発行:読売新聞
        (ガウディ展2003年 日本語版カタログ)

    ※03 「世界の建築 第5巻 ゴシック」 1982/6/17 定価6,800円
        責任編集 飯田喜四郎  発行所 株式会社 学習研究社