葛西臨海公園展望広場 1995(58)
(クリスタルビュー)
             設計:谷口吉生 1937-

               photo by mirutake  2007.07


JR京葉線で、ディズニーランドの舞浜駅より一つ手前「葛西臨海公園」駅下車、ホームからその姿を正面に遠望できます。梅雨時の晴れ間をぬって行ってきました。久しぶりでした。

駅から真っ直ぐな道が展望広場に向かっています。そのガラスの箱は今も人々を迎え入れていました。
今から12年前にカーテンウォールの方立てが構造部材でもあるという、近代の美意識を突き進めた、端正な建築が作られました。今も透明に美しく佇んでいました。少し汚れて。


けれどその建築は美にとどまることなく、さらなる課題を抱えていました。建物の前に立てば直ぐに解りますが、内部の人と外部の人の目線がよく合うことに気づきます。それは目線の交換=新しい関係の場が意図されたものなのではないか?と感じたのでした。

建築家は「背いの高い展望台でなく、回りの木々を超える程度の高さの低い展望台で、海浜公園の海を十分満喫できると思い、しかも多くの人々が同時に展望できる場となる」と設計の意図を語っています。
こういう発想の転換に、時代のカフェが歩道に向かって「見る見られる関係」でお茶する時代に、そこに呼応するかのような建築家の発想の転換を視るのは、自然なことではないでしょうか。そしてこれは新しい時代の社交性ではないかと感じたものでした。


この中央のゲート状の開口を突っ切ると、葛西臨海公園が広がっている。手摺りに持たれてみんな爽快な気分を味わっています。

トップライトの屋根を支えているのがカーテンウォールの方立てであり、柱でもある50×120の構造耐火鋼を、サッシュの精度で制作していると言うことです。構造鉄骨で造ったサッシュというところが新技術と言うこと。部材の現場溶接が大変だったようです。
ガラスの箱の内部は、コンクリートの箱が構造として踏ん張っていることが解るでしょうか。ガラスの幕の内部に、人の歩く床はコンクリートの箱として内蔵されました。



そのコンクリートの箱の仕上げに建築家は、50角の白い磁器質タイルを選んだのです。
ガラスの透明性を受け止めるマッスを、打放しコンクリートでも白色ペイントでも鋼板パネルでもなく、白い磁器質タイルとしたのでした。海浜故の耐久性と言うこともありますが、他の外壁面にアルミ鋼板が使われていますから、もっと違う意味があるようです。

それは50角グリットの白い無釉磁器質タイルになら、このマッスが浮き上がることもなく(光りすぎることなく)、ガラスの背景として落ち着いて受け止めてくれると思ったのではないでしょうか。我々建築関係者でも、この建物が実はタイル貼りであることを解っているものは、少ないです。



この写真の光は直射光でなく、日陰の面なのです。天空光で反射しているタイル面に無目が映っています。直射光でなくっても、角度によってはここまで光るのですね。


正面から天空光で見るなら、無釉磁器質タイルゆえに、落ち着いた鈍い光の白を造ってくれるのが感じられるのではないでしょうか。





ところで斜路をゆく人と良く目線が合うのです。
内部の人と外部の人が、見る見られる関係が、こんなに楽しくある。以前よりずっとおおらかに目線の関係があるように感じられた。


エントランスを入ると、ガラスの幕に囲まれているのが良く解る。その内側に磁器質タイルのコンクリート構造が構成されている。


サッシュは屋根を支えているので、構造部材でもある。耐風圧を分散する鋼管が、サッシュからコンクリートの箱=磁器質タイル面に割り込まれてアンカーされている。


この暗い通路ではモニターTV=葛西臨海公園の埋め立ての歴史が映し出されている。


水族館エントランスガラスドームなどを展望する。展望コーナー(2階)。

2階からのスロープ。

スロープ上部、トップライトと耐風荷重分散鋼管を見る。
このトップライトが何カ所も割れていました。そこから漏水するから、ガラス手摺りも汚れていました。
また床吹き出しのパネルが何枚も浮いているのです。
管理しっかりして欲しいなー。

展示コーナー(踊り場)からのスロープ。

1階出口上部。

西面階段踊り場。



地下1階部分外壁は、なんと打放しコンクリートです。タイル張りではないのです。
基壇としては白くなくて良いと言うことか、耐候性でタイルを貼っていない、ガラスの透明を受け止める磁器質タイルと言うことなのですね。


横に倒されて長く寝そべった展望広場。

植栽が良く生長して、見る見られる視線が通らない=関係が弱められていた。

東面展望台。

                       070716 mirutake


関連hp
  谷口吉生 ウィキペディア
  建築構造用耐火鋼材

  葛西臨海公園