82 Rue de Villiers, 78300 Poissy, フランス
サヴォワ邸 1931 (54)
villa-savoye.fr



                  設計: ル・コルビュジエ 1887-1965 (78)
                      Le Corbusier

今回はサヴォワ邸の配色が現在示されているものとは全く違うことが提起された=「白い壁、デザイナードレス 近代建築のファッション化 マーク・ウィグリー」による配色=サヴォワ邸のフォトショップ加工の写真です。きれいにできてないのが残念無念ですが。白くなかったサヴォワ邸と言う問題提起は、近代建築の流れが本当は多色建築にあった。タウトやグロピウスやコルヴィジェさえもが多色建築を目指していたことが隠蔽されてきたということなのです。その最初の提起です。


    MOMAの1932年インターナショナルスタイル展 書籍のサヴォワ邸の写真と解説部分
「近代建築の色彩」探求中にサヴォワ邸について以下の記述に出会った。
(SD選書139 インターナショナル・スタイル 19780630 鹿島出版会より)


>>上階の青とバラ色の風よけからなる、 
サヴォワ邸は白とばかりと思っていたが、3階が色彩になっているのか。なんで写真に色彩の痕跡がないのか?白いのか?


    サヴォワ邸 今までの白い姿


    インターナショナルスタイル展 書籍の文章のサヴォワ邸配色


「白い壁、デザイナードレス 」著者マーク・ウィグリーによってサヴォワ邸の元の色彩が白ではなく、2階薄緑色と3階R壁部がバラ色であったことが暴露されています。余りに衝撃なのでそれらしき色彩をフォトショップで着色し確認してみました。

    「白い壁、デザイナードレス 」で指摘の原設計のサヴォワ邸の配色




202204から「近代建築を色彩の系譜として捕らえる」とテーマを掲げまして、色彩建築の最高峰バラガンのギラルディ邸やタウトのグラスハウス、ワイゼンホーフジードルング・タウト棟、オットー=リヒター通り集合住宅、TAUTES HEIMなどを取り上げてきました。

さらにコルビュジェのぺサック集合住宅やワイゼンホーフジードルングを取り上げて見ると、コルの「白の時代」と言われる建築が決して白だけではない、白を基調とする多色建築と確認できており、さてこれをどう取り上げてゆこうかと思っていたところでした。

そしてMOMAのインターナショナルスタイル展1932の書籍にあるサボワ邸は白黒写真ですが、解説で3階は青とバラ色と書かれていました。これは発見だと思っていたのですが、マーク・ウィグリーの「白い壁・・・」には、さらに2階が薄い緑色だったと記述されていたのです。
(コルの有名なワイゼンホーフジードルングの建物の後ろに隠れている棟が、実は薄緑色なのです。これは現在の写真ですが集めていて見付けました。最後に掲載)

この書の訳者は前文を書いていますが、サボワ邸の薄緑色について全く触れられていません。後半の解説の方も全く触れていません。どうしてなんでしょうね?

マーク・ウィグリーの「白い壁・・・」の主張は、白いインターナショナルスタイルを打ち出してゆくためにMOMA一派はこれだけの捏造をしていること、そのためにコルやグロピウスやタウトの多色建築への情熱を無かったことにしてしまっている、という告発の書になっています。これがこの本の主題です。(多色建築への解説も相当な内容です。白を基調とした多色建築を、デ・ステイルのモンドリアンやドゥースブルフやタウトやコルやの色彩論も登場して解説しています。近代建築の色彩についてこれだけ丁寧にわかりやすく(難しいが)系統だてて書いた人はいないでしょう。そもそも色彩の作用について書かれたことを理解するのが難しいのに。これからはここを起点に近代建築の色彩について考えてゆくことになったと言うことですね。)

経歴を見ますとマーク・ウィグリーはMOMAからデビューしている人なので、この本はMOMAの白いインターナショナル・スタイル批判している書なのですから、信用できるのでしょう。多色建築理解を大変遅らせて(インターナショナル・スタイル展から90年か)しまった意味もあって、近代多色建築の系統について掘り下げて書かなければならなかったと言う気がします。

                                mirutake 20240331

※写真は「けんちく激写資料室」より



    
    「白い壁、デザイナードレス 」マーク・ウィグリー著  2021/10/12 鹿島出版会 

    P397 ティク10 ホワイトアウト 自然化した白    サヴォワ邸の部分切り出し
サヴォア邸に関しては、この本((悪名高き著作『インタ ーナショナル・スタイル』))の中では他の建物よりも多くのページが割かれ、「白い二階部分は丸柱に支えられ、重さを感じさせない。その厳格な対称性は、構造体によって制限を受けない、抽象的な形態の素晴らしい検討としての青とバラ色の風除けを際立たせている」〔 89〕。多色は一度は認められながらも白を支持する中で消されてしまった (このファサ ードーー二十世紀でおそらく最も有名なファサードーーはわずか二年前に完成したものだが、もともとの構成は、薄緑色の二階部分が曲面のバラ色の風除けの下に置かれそしてそれが濃い緑色の地上階の上に浮かぶ、というものだったことを覚えておかなければならない )〔 90〕この微妙な操作は文章によつても繰り返されている。


3.関連 hp
    ル・コルビュジエ(ウィキペディァ)
    Mark Wigley  (Wikipedia)

    インターナショナル・スタイル と抽象表現主義絵画〜白い壁を飾るものは〜
ヒッチコックとジョンソンらは、ヨーロッパのモダニズムの背景にあった民衆のための正義という社会思想をきれいに捨象し、 インターナショナル・スタイル というアメリカが太鼓判を押した意匠商品として仕立て上げる。政治力と経済力での勝利が明らかになっていた当時のアメリカが唯一必要としていたのはヨーロッパの文化だった。
《ヴォリュームとしての建築》、《規則性》、《装飾付加の忌避》が インターナショナル・スタイル の三つの原理として提示される。


     www.google.co.jp/maps/ ル・コルビュジエ - ヴァイセンホフ・ジードルングの住宅(美術館)